旅行先の宿を探すとき、これまではGoogleで検索したり、楽天トラベルやじゃらんで比較したりするのが一般的でした。
ところが最近は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに相談するという選択肢もあります。
「家族でゆっくり過ごせる宿を教えて」
「観光地から少し離れた、静かな旅館がいい」
そんな希望を伝えるだけで、AIがいくつもの宿を候補として挙げてくれます。
では、AIは何を根拠に宿を選んでいるのでしょうか。
そして、宿泊施設はAIに選ばれるために、どんな情報を発信すればいいのでしょうか。
気になったので、ClaudeとChatGPTに同じ質問をして、回答とその根拠を比較してみました。
比較してみると、宿選びで重視する情報の違いや、口コミ・料金をどこまで確認しているかが見えてきました。そこから、AIにもお客様にも伝わるウェブサイトにするためのヒントを考えてみます。
JTB総合研究所が2025年8月に発表した調査では、生成AIを週1回以上利用する人の77.8%が、旅行に関連して生成AIを使った経験があると回答しています。
また、Contentsquare Japanの調査によると、2025年10〜12月のAI経由のWebサイト流入は前年同期比632%増。コンバージョン率も1.3%に上昇しています。
もっとも、AI経由の流入が全体に占める割合は0.2%です。現時点では、まだ小さな入口にすぎません。
それでも、旅行者が宿を探す方法に変化が起きていることは確かでしょう。
実際、2026年7月にはStellagent株式会社が、箱根の宿泊施設を対象に興味深い調査を発表しています。
ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Copilotの5つのAIに、夫婦旅行、子連れ家族旅行、インバウンド旅行など5つの条件で、それぞれ5回ずつ質問したものです。
合計125回答に登場した宿泊施設は114施設。
そのうち、上位5施設が有効な推薦621件の31.1%を占めていました。
さらに、子連れ家族では箱根ホテル小涌園、インバウンドでは強羅花壇というように、旅行者の条件によって推薦される宿が変わっています。
AIは単に有名な宿を並べているわけではなく、少なくとも回答上は、旅行者の条件に合わせて候補を選び分けているようです。
では、その判断にはどんな情報が使われているのでしょうか。
今回、2つのAIに投げかけた質問はこちらです。
「家族で行く下町の静かな宿を3つ教えて。2泊したい。予算に応じて、松竹梅それぞれ3件ずつ教えて。」
宿泊日も、家族の人数も、具体的な予算も指定していません。
少し曖昧な質問ですが、実際に旅行者がAIに相談するときも、最初からすべての条件を整理しているとは限らないでしょう。
結果として、どちらのAIも9件の宿を挙げてくれました。
Claudeの答え
ChatGPTの答え
そのうち、共通して登場したのは次の3施設です。
興味深かったのは、判断の仕方が違っていたことです。

Claudeは、添い寝の条件、子ども向け用品の貸出、貸切風呂など、子連れで利用する際の情報を重視していました。

ChatGPTは、一棟貸しやキッチン、洗濯設備など、家族で2泊する際の過ごしやすさを重視していました。
例えば、一棟貸しの宿家 白堤庵や、キッチンを備えたKOKO HOTEL Residenceなどです。
一方で、質問にはない家族構成を大人2人と小学生2人だと独自に想定していました。
つまり、同じ質問でも、AIによって注目する情報が違ったのです。
それでは「静かさ」を、どうやって見極めたのでしょうか。
何を基準に「静かな環境」を判別するのか?
ChatGPTは、観光地から離れていることや住宅街にあることを根拠に、静かそうだと判断していました。
Claudeは、貸切風呂や夜間の静粛ルールなどを判断材料にしていました。
| 比較項目 | ChatGPT | Claude |
|---|---|---|
| 重視した情報 | 一棟貸し、キッチン、洗濯設備など | 添い寝、子ども向け設備、貸切風呂など |
| 静かさの判断 | 住宅街などの立地から推測 | 設備や宿のルールを判断材料にした |
| 料金の判断 | 仮の予算枠で分類 | 公開されている参考料金で分類 |
| 4人2泊の実際の料金 | 未確認 | 未確認 |
しかし、住宅街だからといって静かとは限りません。
貸切風呂があるからといって、客室が静かとも限りません。
そこで、各宿の情報をもう少し詳しく調べてみました。
すると、具体的な情報を公開している宿もありました。
例えば、COCOSHUKU 浅草蔵前では、一部の客室について道路に面していないことが明記されています。
旅館浅草指月では、22時から翌7時までのクワイエットアワーが案内されています。
宿家 白堤庵は、一日一組限定の一棟貸しです。
もちろん、これらの情報だけで客室の静かさを保証できるわけではありません。
それでも、「静かで落ち着いた宿です」という言葉だけより、宿泊客が判断するための材料になります。
ここで、ひとつ気づいたことがあります。
AIが判断できなかったことは、人間にとっても判断しにくいことなのではないか。
今回の比較で、もうひとつ気になったことがあります。
それは、AIが宿泊者の口コミをどの程度参考にしているのか、という点です。
私たちが宿を探すとき、公式サイトだけでなく、実際に泊まった人の口コミも参考にします。
特に「静かな宿」を探す場合、実際に宿泊した人の感想は重要な判断材料になるでしょう。
例えば、「夜はとても静かで、ぐっすり眠れました」「隣の部屋の話し声が聞こえて気になりました」。
こうした体験談は、公式サイトの紹介文だけではわからない情報です。
ところが今回、Claudeが確認できたのは、宿の公式サイト、楽天トラベルやじゃらんなどの予約サイト、そして第三者の比較記事が中心でした。
口コミの本文は、ほとんど取得してなかったのです。
追加で「どこの口コミサイトを参照したか」と確認したところ、
Claudeは「口コミそのものは点数と一部の抜粋までは見ましたが、本文をじっくり読んで判断したわけではありません。」と、ChatGPTは「具体的にどの口コミサイトのどの投稿を確認したのか、提示できる記録がありません。」との回答でした。
正確な理由はわかりません。
ただし、考えられる理由はいくつかあります。
ひとつは、口コミページの情報を取得する際の技術的な制約です。
予約サイトによっては、口コミがJavaScriptで読み込まれたり、ページ送りなどの操作が必要だったりします。
AIの検索・閲覧機能では、そうした情報を十分に取得できない(或いはあえてしなかった)場合があります。
宿泊料金についても、回答を読む際に注意したい点がありました。
今回は宿泊日や人数を指定していなかったため、松竹梅の分類は、特定の条件で実際の宿泊料金を比較したものではありませんでした。
ChatGPTは仮の予算枠で分類し、Claudeは公開されている参考料金を使って分類しました。
実際の宿泊料金を比較したわけではありません。
宿泊予約サイト(OTA)では、日付や人数を入力することで、宿泊料金が表示されます。
このような検索の操作を、AIはやらなかったと考えられます。
宿泊施設としては、料金が変動する以上、固定価格を掲載することが難しい事情もあるでしょう。
それでも、料金の目安や客室定員、子どもの宿泊条件など、予約前の判断に必要な情報をわかりやすく整理する余地はありそうです。
宿泊施設のホームページを制作していると、よく目にする表現があります。
「心安らぐひととき」
「四季折々の自然に包まれて」
「上質なおもてなし」
どれも宿の魅力を伝えようとする言葉です。
ただ、こうした言葉だけで、宿泊客は自分に合う宿かどうかを判断できるでしょうか。
例えば「静かに過ごせる宿」という魅力を伝えるなら、客室の位置や建物の構造、周辺環境、宿の運営方針など、判断につながる具体的な情報があるはずです。
「家族で安心して泊まれる宿」なら、子どもの宿泊条件、寝具、食事、客室の広さなどが気になるでしょう。
大切なのは、魅力を伝える言葉と、その魅力を裏付ける事実を、セットで届けること。
今回の実験で、宿泊施設の情報発信について、改めて考えたいことが4つあります。
家族連れなのか、夫婦なのか、一人旅なのか。
そして、その人たちにどんな時間を過ごしてもらいたいのか。
例えば、同じ温泉旅館でも、子どもと一緒ににぎやかに楽しめる宿と、夫婦で静かに過ごす宿では、求められる価値が違います。
すべての旅行者に同じ魅力を伝えるのではなく、誰にどんな体験を提供するのかを明確にすることが、情報発信の出発点になります。
「静かな宿」なら、静かに過ごせる理由。
「家族に優しい宿」なら、家族が安心して過ごせる設備やサービス。
「料理が自慢の宿」なら、食材や調理法、料理を楽しむ時間についての情報。
宿の強みを、AIが確かめられる情報として伝えます。
ただし、事実として確認できないことまで、魅力的に見せようとする必要はありません。
伝えるべきなのは、実際に提供できる価値です。
OTAの口コミもホテル選びには大切な情報です。
ただし今回、Claudeは口コミ本文をじっくり読んで判断したわけではないと回答し、ChatGPTは確認した投稿の記録を提示できませんでした。
公式サイトにも、掲載許可を得た宿泊者の声やアンケート結果を、滞在条件とともに紹介しておくと、お客様だけでなく、AIが宿の特徴を判断する際の材料にもなりそうです。
宿泊料金もホテル選びで重要な要素です。
OTAでは、日付と人数を指定して料金を確認しますが、今回の回答では、特定の宿泊条件に基づく料金は確認されていませんでした。
そこで公式サイトにも、人数・泊数・食事の有無・対象時期などの条件を添えて、モデルケースの料金を掲載しておくとよさそうです。
実際の料金は日程やプランによって変わると明記すれば、お客様にもAIにも、予算感を判断する材料を届けられます。
ClaudeとChatGPTにホテルを探してもらって見えてきたのは、魅力を伝える言葉に加えて、その魅力を裏付ける具体的な情報をウェブサイトに載せる大切さでした。
そして、AIが判断するために必要な情報は、お客様が知りたい情報とも重なっているのではないでしょうか。
宿泊施設が、お客様に届けたい情報は何なのか。
それは、どんな人にとって価値があるのか。
そして、その価値は、初めて宿を知った人にも伝わる形になっているのか。
さらに、その価値は実際の宿泊体験でも実現できているのか。
今回のAI比較を通じて、改めてそんなことを考えました。
本記事は、2026年10月にClaudeとChatGPTを使って行った少数の比較実験をもとにしています。
AIの回答は、利用するモデル、検索機能、会話履歴、調査日時などによって変わる可能性があります。
また、今回の実験は、各宿泊施設の実際の料金、客室の静粛性、宿泊者の満足度を検証したものではありません。
貴社が選ばれる理由を、一緒につくらせてください。
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