実績紹介
実績紹介
https://www.matsuya.org/
塩原温泉の山あいにある、松楓楼松屋。
渓谷を見渡す露天風呂付きの客室が22室。4つの異なるタイプが揃い、それぞれに景色も間取りも違う。
どの部屋も、一度泊まったら忘れられないような特別な体験を持っている旅館です。
最初にご相談をいただいたとき、「新しい客室ができたのをきっかけに、旅館としてのこれからの姿をサイトでちゃんと見せていきたい」と。
前回のリニューアル(2017年)から6年。
その言葉には、ただデザインを新しくしたいという意味以上のものが込められていました。
構想から完成まで、約1年かけたプロジェクトです。
何度も現地に足を運び、時には打ち合わせのあとお部屋を提供していただきながら、松屋さんと一緒に「この旅館らしさとは何か」を言語化し続けました。
以前のサイトが抱えていた問題は、客室のページを1枚にまとめていたことでした。
22室、4タイプ。
それだけ豊かなラインナップがあるのに、並べて見るだけでは違いが伝わらない。
料金の仕組みも複雑で、ユーザーが自分に合った部屋を見つけるまでに何度も迷子になってしまっていました。
そこでまず、客室を1部屋ごとに独立したページとして設計しなおしました。
「どの部屋にしようか」と比較検討しながら選ぶ体験そのものを、サイトの中に作りたかったのです。
画面左端に「いま見ている部屋の名前」を常時表示するUIにしたのも、その発想からです。
複数のページを行き来しながら迷う時間を、ネガティブな混乱ではなく、旅の前の楽しい期待に変えてほしい。そういう意図がありました。

もう一つ、このプロジェクトで特に力を入れたのが写真です。
松屋さんの客室の本当の魅力は、塩原渓谷の景色にあります。
窓から見える木々の緑、露天風呂から眺める山の稜線、時間帯によって変わる光の表情。
それをきちんと撮影で捉えることが、どんな言葉よりも伝わると考えました。
「泊まる前から、滞在が想像できる写真体験」を目指して、撮影のアングルや時間帯にもこだわりを持ちながら、写真ディレクションを行いました。
また松屋さんは、「料金も設備も、すべてお客様に正しく伝えたい」という方針をはっきりお持ちでした。
複雑な料金体系をPDFで見せるのをやめ、プルダウンで条件を切り替えながら確認できる料金UIへ。
アメニティや食事内容も含め、情報の抜け漏れをなくすことを徹底しました。
情報の誠実さが、旅館への信頼につながると考えるオーナー様の思いを、ウェブサイトでも丁寧に設計しました。

このプロジェクトを振り返ると、「設計する」仕事だったという感覚が強く残っています。
客室のページをどう分けるか、どの写真を使うか、料金をどう見せるか。
ひとつひとつの判断の積み重ねの中に、松屋さんらしさへの理解が必要でした。
デザインとは、そういうものだと改めて感じたプロジェクトです。
長い時間をかけて一緒につくり上げた分、完成したときの充実感も特別でした。