「ECサイトを作りたい」と考えた時、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「どんなデザインにするか」「何を売るか」といった楽しい部分です。
しかし、ウェブデザイナーとして多くのサイト制作に携わってきた経験から言わせてもらうと、ECサイトの成否を分けるのは、デザイン以前の「地味で面倒な事務作業」です。
ここを適当にしたままサイトを公開すると、後のトラブルや法的な不備で、せっかくのビジネスが短命に終わります。今回は、2017年に書いた記事をアップデートし、現代のEC運営において「開店前に絶対に決めておくべきこと」をまとめました。
1. 決済手段の選定(審査には時間がかかる)
「クレジットカードが使えればいい」というのは昔の話です。今はターゲットに合わせて決済手段を選ぶ必要があります。
- 必須の3種の神器: クレジットカード、スマホ決済(PayPayなど)、あと払い(Paidyなど)。
- 審査の罠: 決済代行会社の審査には2週間〜1ヶ月ほどかかります。「サイトが完成してから申し込む」では、1ヶ月間売上がゼロのまま維持費だけ払うことになります。
- 手数料の計算: 決済手数料(3.5%前後)だけでなく、振込手数料や月額費用を原価に組み込んでいますか?
2. 配送業者・配送料の設計
「送料一律」で済ませられるのは、資金力のある大手だけです。小規模ECこそ、ここを緻密に決めるべきです。
- 配送業者の契約: 個人や小規模の場合、正規運賃では利益が出ません。どの業者と契約し、梱包サイズをどう抑えるか。
- 送料無料ラインの損益分岐点: 「○円以上で送料無料」を設定するなら、平均客単価と利益率を計算し、赤字にならないラインを冷徹に弾き出してください。
- 梱包資材の確保: 商品を何に入れて送るのか。資材の購入コストと、それを保管する「場所」の確保も忘れてはいけません。
3. コンプライアンス(法的義務)の徹底
ここは「めんどい」では済まされない、法律の領域です。
- 改正特定商取引法への対応: 2022年の法改正により、注文確定直前の画面で表示すべき項目が厳格化されました。テンプレをコピペするだけでなく、正しく表示されているか確認が必要です。
- プライバシーポリシー: 個人情報を扱う以上、SSL化(https)は「当たり前」。その上で、顧客データをどう守るかを明文化しなければなりません。
- 住所・電話番号の公開: 特商法では運営者の情報を晒す必要があります。自宅住所を公開したくないなら、バーチャルオフィスの契約など事前の対策が必要です。
4. 運営オペレーション(注文メール、返品など)
サイトは作って終わりではありません。むしろ公開した日が「始まり」です。
- 注文・発送通知メール: 注文時に自動送信されるメール、発送後に送るメール。デフォルトの定型文のままで、あなたのショップの「色」は伝わりますか?
- 返品・交換ポリシー: 「届いたものがイメージと違う」と言われたらどうしますか? トラブルになってから決めるのではなく、事前にルール(防波堤)を作っておくのがプロの仕事です。
- 在庫管理: 他のモールや実店舗と在庫を共有する場合、売り越し(欠品)を防ぐ仕組みをどう作るか。
最後に:ECサイトは「お店」である
ECサイト構築は、単なるホームページ制作ではありません。「物流」と「決済」と「法務」が絡み合う、立派な店舗経営です。
「めんどくさい作業」を後回しにする人は、必ずどこかで足元をすくわれます。デザインに凝る前に、まずはこれらの土台をしっかり固めてください。
もし「何から手を付ければいいか分からない」「自分の商品の場合はどうすればいい?」と不安になったら、その時はぜひ専門家に相談してください。